公園という言葉で思い浮かぶ施設や場所はたくさんあります。
TONZAKOデザインの近くにある名古屋市の久屋大通公園は最近リニューアルされ、名古屋の新たな観光スポットとして期待されています。
こうした公園はあまり馴染みのない言葉だと思いますが「都市公園」と呼ばれます。
本来であれば行楽シーズンで全国各地の風光明媚な場所は多くの人でにぎわっていたはずですが、こうした場所の多くは国立公園や国定公園といったエリアに指定されていて、「自然公園」と呼ばれています。
名古屋の人は東山動植物園に行くときは「東山公園に行こうか」などと言いますが、動物園や植物園も公園と呼ばれることがあります。
こうした「公園」という言葉のつく施設の一つに「農業公園」があります。
農業公園の種類
農業とは農畜産物を生産して販売する仕事です。
工業や商業といった名前がつく公園はほとんど思い浮かびませんが、「農業」という仕事を表す言葉がつく公園は全国各地にあります。
海外にも農業公園と呼ぶのかはわかりませんが、農業をテーマにした集客施設は数多くあります。
「農業公園」といってもその運営目的は様々です。大きく分けると以下の2つでしょうか。
- 散策型
農村風景を眺めてのんびりしたり、ちょっとした農業体験などができる公園。公共団体や関係団体などが運営するケースが多い。
- 農業振興型
様々な農業体験や加工体験、飲食や直売所で買い物などができる。観光牧場や果物狩りの観光農園など民間が運営する施設も多い。
農業公園の盛衰
1980年代の日本はバブル景気で最も経済的に豊かな時代でした。
全国各地でゴルフ場やスキー場といったリゾート施設が整備され、それが飽和状態となったところで新たな整備手法として着目されたのがディズニーランドに触発された海外の街並みや風景を模したテーマパーク。そして美しい海外の農村風景を再現する農業公園です。
しかし数十年たった今、こうした施設の中で残っているものは残念ながらごくわずかです。
無くなってしまった施設と現在も残っている施設にはどんな違いがあったのでしょうか。
夢の国ではない
農業公園と言うからには農業という産業に関わる公園です。
今でこそ農業をやりたいという若者も少しは増えていますが、少し前までは「きつい、汚い、危険」といった3K仕事の一つとされていました。
いくら美しい景観を整備してもそれを保っていくには人の力と技が必要です。
スタッフはいくらきれいに着飾っても、動物や植物の世話をすれば泥まみれ、汗まみれ、日焼けもすれば臭いも付きます。
夢の国ではなく、そこにあるのはリアルな世界。日々成長する生き物と向き合うドキュメンタリーの世界です。
夢の国を再現しただけの場所は“夢のあと”となり、リアルな世界をありのままに伝え続ける努力をした所だけが“夢の続き”を見続けられているのではないでしょうか。
これからの農業公園の役割とは
TONZAKOデザインでは公共の整備した農業公園の運営に携わっています。
公共が整備して民間が運営を行う指定管理者制度という方法です。
公共施設としての役割を果たしつつ、民間企業の経験や知恵を生かした運営が期待されています。
ご利用いただくお客さんには様々なニーズがあります。
子供たちに土とふれあう体験させてみたい。新鮮な野菜を収穫して食べてみたい。農作物を作るという体験をしてみたい。
こうしたニーズに応えるために、収穫のみの体験といった気軽なものから、種まきから収穫までのすべての農作業を行うプログラム、そして農や食に関わる様々なイベントも行っています。
こうした体験を通して農作物や自然と触れ合い、心身のリフレッシュや楽しみを享受してほしいと思っていますが、それだけでは税金を使って整備した意義が弱い気がします。
農業という仕事の名前のつく公園です。農業という仕事や農産物を生産する農家という存在に少しでも思いをはせるようになっていただきたい。
今年はどんな作物を育てようか?どこに何を育てようか?お客さんに見ていただくからには美しい畑にしよう。様々なことを考えながら計画を立て、実際の栽培を行っていきます。
栽培が始まってからも
ちゃんと育つのか?天候は?病気にならないか?虫や動物に食べられないか?
収穫までハラハラドキドキの日々が続きます。
農業は楽しく、そして素晴らしい仕事です。
公園で働くスタッフの向こう側に食卓を支える農家の人たちの姿が少しでも思い浮かんでもらえれば。そして子供たちに少しでも農業に対するあこがれを持ってもらえれば。
そんな農業公園にしていきたいと思っています。
Written by 小森