出かけられる場所が限られている。そんな時、自分なりの町や空間を楽しむ「まなざし」をもっていると、身近な空間をより一層楽しむことができたりします。
緑やお花、鳥や蝶々などの生き物を好きな方は多いと思います。また、著名人によって設計された建物や橋梁などの土木構造物に興味を持っている方も多いと思います。
私は、都市の片隅にひっそりと存在し続けている「幽霊」のような存在に興味を持っています。
都市に潜む幽霊を探しに。
一般的に、世の中の人は「役にたつ」ものを作ります。そして、壊れたり、製品寿命が尽きたときなど、それらが役割を終えたとき、役に立つ「もの」は役に立たない「ゴミ」となります。
日本の前衛芸術家、故赤瀬川原平氏は、そんな名前のついた「役に立つもの」と役割がなくなった「ゴミ」との間に潜む第三の存在を見つけ出し、都市に潜む幽霊を探す路上探検という一種の遊びのようなムーブメントを巻き起こしました。
「超芸術トマソン」 赤瀬川 原平 ちくま文庫 1987
ちなみになぜ“トマソン”と呼ぶのか。
大枚をはたいて呼び寄せたあるプロ野球選手にちなんでいるそうです。
氏とその仲間たちが見つけたトマソンには様々なタイプがあるのですが、建物の名残がのこる「原爆型」は、意外と多く発見することができます。
これはトマソンではないかもしれませんが。なにか存在感を放っている壁。
それ以外にも無用の長物となった階段や門扉など、様々なトマソンが存在するのですが、再開発などが繰り返される空間では、それらトマソンは消えゆく運命にあるため、なかなか見つけることができません。
トマソンに遭遇!
日々の合間に、気に掛けながらも唯一みつけられたのが、元は吸い殻入れだったトマソンです。
吸い殻入れ(=役に立つもの)からその役割を奪い去った(=ゴミ)にも関わらず、撤去することなく保存されている。まぎれもないトマソンです。撤去費用を抑えるためにモルタルを流し込むことで、その機能だけを失わせたのでしょう。対のトマソンを生み出しています。
公園という公共空間に守られつつ、喫煙スペースを撤去する機運が生み出した新しいタイプのトマソンではないでしょうか。
今は便利な世の中なので、世間に残るトマソン発見の報告を様々なWEBサイトで見つけることができます。
GOTOが難しいこの頃。よりインパクトのあるトマソンを探しに、遠くのどこかではなく、近所の散策に出かけてみるのも良いかもしれませんね。
Written by 人見