落ち葉を掻きわけると、今年もいたいた、フキノトウ。
スノードロップは、いつの間に、すっくと顔出して、控えめに咲いてる。
日向の土手で一面黄色く染めているのは、陽ざしを浴びて、一斉に花開いたフクジュソウだ。
立春を過ぎると、こんな、小さな春探しから、私の春は始まります。
少しずつ足元の草花が動き始める今の季節から、落葉樹の葉が生い茂る前の5月頃にかけて、何といっても“地上10cmの世界”が面白い。
庭で楽しむ“地上10cmの世界”
クリスマスローズ、オキナグサ、ハルザキシュウメイギク、イチリンソウ・・・。庭では、こんな草花が続きます。
「春の妖精」とも表現される「スプリング・エフェメラル※」や、これに分類されない種も、順々に花を咲かせ、目を楽しませてくれます。
※「スプリング・エフェメラル」(Spring Ephemeral):春先に花を咲かせ、夏以降は休眠に入る植物群の総称で、「春植物」とも呼ばれます。
私の密かな楽しみ方は、芽吹きから見つけること。
花の時期があまりにも短く儚いので、そろそろかな?と落ち葉や雪をかいて、「あ、いたいた」と、まだ小さい芽を見つけてはニンマリ。花はもちろん、実がなり、種が飛ぶまで、存分に楽しみつくします。
里山の林内で楽しむ“地上10cmの世界”
全国的な傾向として、人の手が入らなくなった里山の林内では、常緑樹や下草が繁茂し、春先の明るい林床・林縁環境が少なくなり、なかなか春の妖精たちを見つけることが難しくなりました。
だからこそ、思いがけず見つけたときは、まるで宝物を発見したかのようにうれしくなります。数はまばらでも、本来の自然の姿が見られるのは、貴重な体験だなと思います。
さて、庭の延長のような裏山へ足をのばしてみると...、まだ足元の春探しには、少し早かったようです。
その代わり、落ち葉にまぎれて見つけたのは、生き物のこんな痕跡たち。
12月のコラムで扱って以来、やたら目に付くようになった「ウスタビガ」のまゆ “ヤマカマス”、同じヤママユガの仲間「クスサン」のまゆ “スカシダワラ”、金青緑色に輝くのは森林性の「アオクチブトカメムシ」(亡骸)。そして、これは年中見かける「シカの糞と足跡」。
春らしい陽気の日が少しずつ増えてきました。足元の季節の移り変わりを見つけに、また野山へ出かけたいと思います。
皆さんの身近な場所でも、“地上10cmの世界”で、春を告げる小さな妖精たち、探してみませんか。
Written by 倉方